2009年11月7日土曜日

アラビア語方言のお話

「アラビア語喋れると、どこでも通じて便利でしょ~」


なんて言われますが、
実はアラビア語はかなり面倒な言語だと思います。
中東全域で使えるようでいて、
意外に使えないからです。


使えないその訳は、
外国人が学ぶアラビア語と。
現地で各地の人々が喋るアラビア語の「大きな差」。

例えばパレスチナ方言を喋る私は
モロッコ人の言うことがさっぱり分からず、
そこで共通語を喋ろうとすると
とても堅苦しい話し方になってしまいます。



私達がアラビア語を日本で勉強しようとする時、
初めに習うのは「フスハー」と呼ばれる正則語。
コーランや新聞、ニュースを読み聴きするための言語です。


しかし市井の人々が話す言語は「フスハー」ではなく、
「アーンミーヤ」と呼ばれる方言。
現地でも、コーランを読まなかったり学校に通わなかった人々は
フスハーを解することが難しいものと思われます。
それほど、使わない言葉なのです。

だから、フスハーをマスターしたからといって
現地の人々ときちんとコミュニケーションが取れるわけではなく、
中東各地域の諸文化を読み取るには
フスハーでは不足してしまいます。


方言も地域によってそれぞれ。
湾岸方言、シリア方言、エジプト方言、
モロッコ方言、イラク方言等があり、
更にそれぞれの中でも地域によって微妙な違いがあります。

例えて言うなら、
エジプト方言は日本の大阪弁。
(人々のノリ的にも大阪っぽい。)
モロッコ方言はシリア方言話者にも分からなかったりするので
琉球語といったところ?

シリア方言は雰囲気的に京都弁っぽいですが、
大阪弁であるエジプト方言とはかなり違います。
イラク、湾岸はベドウィン系。何弁に例えればいいんだろう?



パレスチナ方言を喋る私は、
シリア方言カテゴリに属しつつも
「田舎者だね~」的な雰囲気の喋り方であるようです。

そんな私の言語歴はというと、


東京外国語大学でフスハーを3年(落ちこぼれ)

パレスチナに渡航

フスハーを喋っても通じず、
相手の喋ってることが分からず、
買い物をするにも困る

パレスチナ方言の日常会話を何とか習得

エジプトに行ったら周りの言ってることがサッパリ

シリアに行ってもたまに単語が分からない

帰国後、フスハーの授業でを取る


といった感じ。
という訳で、
どこでもアラビア語が喋れる人材になるためには、
フスハーをきっちり学んだ上で
方言を幾つか学び、その構造を理解する必要がありそうです。

何せ、方言それぞれで文法や音の崩し方がそれぞれ違う。
シリア方言では未来形と現在進行形が同じ表現になる一方で
エジプト方言にはきちんと未来形があったりする。
シリア方言ではとても丁寧な言葉が、
モロッコ方言では口にしてはいけない言葉になったり。
エジプト方言ではj音をg音で発音するけれど、
湾岸方言ではq音をgもしくはgh音で発音します。

という訳で、
アラビア語話者を通訳に採る時には
出身や方言も気にしてあげてくださいねー!
というお話でした。オチなしでおしまい。

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